(Leaf Visual Novel Series vol.1) "SIZUKU" Another Side Story

雫・断章

「素質ある者」

Written by -->MURAKUMO AMENO HOME PAGE -->SEIRYU-OU KYUUDEN

Original Works "SIZUKU" Copyright 1996 Leaf/Aquaplus co. allrights reserved


 カチカチカチカチカチカチカチカチ・・・
 けだるい午後の授業の中、僕の意識はそんなシャープペンの音で埋め尽くされる。
 退屈だ。
 どこまでも続く日常、秩序の名のもとに統制された生徒達、そして役にもたたない知識
 の刷り込み・・・もうこんな世界は飽き飽きだ。
 もしこの言葉に反応してチョコクリスピー星からの使者が来たとしても、今の僕にはそ
 れに抗う気力すらない。
 もう何十回この時を過ごしたのだろう。・・・いつもと変わらぬ授業風景。
 そんな時間さえ希薄な空間の中で、僕はいつもの妄想を始める。
 ・・・妄想の中での僕は、宇宙へと羽ばたくアストロノーツだ。パイロットシートに身を沈
 める僕は、静かに打ち上げの時を待つ。
「どうじゃな、最新型ロケットの乗り心地は。」
「ああ、最高だよ父さん。」
 ・・・おや?
 なんか今、妄想にセリフが入ったような・・・
 それにいつもの妄想と様子が
 「なんたって俺の夢だったんだもんな、父さんのロケットで宇宙にでるのは。」
 うわぁっ!今度は僕のナレーションを無視してセリフが入った!
 「そうか・・・がんばってこい、凱!」
 だれだよその凱って!僕の名前は長瀬祐介なはずだぞ!そんなロボットアニメの主人公
 みたいな名前じゃないっ!
「最終チェック終了、これより中央管制コンピューターは最終フェイズ・ブログラムへと
 移行します。」
「さあ、・・・いよいよだ。」
 いよいよじゃないっ!
 これは僕の妄想だぞっ!世界を破滅させる最終爆弾の妄想が何でいきなりこんな事にな
 るんだ?
「カウントダウン開始。10・9・8」
 おいおいおいっ!
 いきなりカウントダウンか、しかも10から!
 アニメファン激怒ものの展開の悪さと、SFファン憤慨ものの打ち上げプロセスの唐突
 さが、僕の頭を加速度的に混乱へと叩き込んで行く。
「命(みこと)、必ず・・・帰ってくるからな。」
 おまけに凱とやらは胸のポケットから恋人の写真が入ったペンダントを取り出して、一
 人浸っているし!
  自分の中で暴走する妄想に僕は、(ああ・・・僕はゲーム本編も始まらずに、狂気の扉を
 開いてしまうのか・・・)そんな自暴自棄な思考に身をゆだねはじめた。
 と、その時、
 ガタンッ!
 倒れた椅子が勢いよく教室の地面を叩く。
 その音は僕を現実の世界に引き戻しただけでなく、授業中の教室を一瞬にして静かにさ
 せた。
 正気に戻った僕がその音の方向を見ると・・・一人の少女が机に手をついて、立ち上がって
 いる。その後ろの倒れた椅子が彼女の今の行動をしめしていた。
 その少女の名は、太田香奈子
 僕の斜め前の席に座っている、生徒会副会長を務める女の子だ。
 周囲の生徒達の様子をうかがうような視線の中、僕は彼女の行動に感謝すら覚えていた。
「やった!ようやくこれでゲーム本編が始まる!あんな完全暴走シンクロ率400パーセ
 ントな妄想とも、これでおさらばだぁっ!」
 内心で声高らかに叫んだ僕は、薄気味悪い声で笑い出した香奈子さんを期待のこもった
 まなざしで見守りつづけた。
「・・・うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・」
 さぁ、そして香奈子さんはその空ろに開いた口から!
「・・・・・・ゾォーンダァー・・・」
 とても描写できない淫猥な言葉を・・・って・・・あれ?
「ゾーンダーーーー」
  ・・・再び僕の思考が加速度的に暴走しそうになった時、僕の肩をポンポンッと叩く人が
 いた。
「?」
 振り向いてみると、そこには愛しの瑠璃子さんが空ろな微笑みを僕に向けながら立って
 いた。
「あれ?瑠璃子さん、授業はどう・・・」
 そこまで言って僕は異変に気がついた。
 いつもと変わらぬ表情、いつもと変わらぬ空虚な瞳、いつもと変わらぬ瑠璃子さん・・・
 なはずなのに、何故かその額には「G」の文字が輝き、背中には何枚もの羽がある。気
 のせいか、髪も緑色に輝いているような・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 薄れていく意識の中で僕が最後に聞いた言葉は、瑠璃子さんのとても優しいささやきだ
 った。
「長瀬ちゃん、勇者の素質・・・あるよ。」

              BAD END




WARUAGAKI

Back

RUAGAKI

Back