(Leaf Visual Novel Series vol.3) "To Heart"Another side story

メカ耳少女の居る風景

第二十一話
『さよなら元帥』の巻

Written by -->MURAKUMO AMENO HOME PAGE -->SEIRYU-OU KYUUDEN

Original Works "To Heart" Copyright 1997 Leaf/Aquaplus co. allrights reserved


 この小説は、販売・株式会社アクア、企画・制作・リーフのウィンドウズ95用ヴィジ  ュアルノベル・ソフト「ToHeart」を基にした二次創作物であり、作中に使われる名称  は一部を除いてほぼフィクションです。  したがって、ゲームの公式設定・裏設定に準じた物語ではないために、誤解を招く場合  等がありますが、その場合はご容赦願います。  ちなみに、  この小説の中に出てくる少女たちと会いたいと思ってくれた方々には、つつしんで「探  せば会える」とだけ言っておきましょう。


平盛○○年03月05日(金)・天気…晴れ



 冷たい風が、空港の前を足早に通り過ぎて行く。
 バスを降りた俺とリュースは、その風の冷たさにさえ名残惜しさを感じていた。
「向こうに行ったら、もう暖かくなってるんだろうなぁ…」
「そうですね…」
 互いに、しばし無言で空を見上げる。
「引越しも、書類の手続きも、全部終わったな…後は向こうに行って、新しい生活を始め
 るだけだ…」
「…頑張りましょう、ご主人さま。」
 リュースの笑顔が俺の迷いや不安を、優しく消してくれる。
「そうだな…さぁ、行こう。」
「はい…」
 俺の傍に寄りそうリュースの肩を抱いて、俺は空港の中へと歩いて行った。
 入口の前、ふと振り向いて今まで育ってきた街を見やる。

 リュースは元帥に「…本当に、ありがとうございました。」と言った。
 セレブは「私のマスターは、兄貴さんです」と少し嬉しそうに言った。
 皆は、「たまには帰って来い。」と俺に言った。
 その全てが昨日の事だ。
 今日、俺はリュースと二人で旅立つ。
 夢のために。
 こいつとの新しい第一歩のために。

 素直には言えなかった、元帥への感謝の言葉。
「…さよなら、元帥。リュースをありがとう…」
 それをぼそっと呟いて、俺はリュースの方を強く抱いた。
「大事にするよ…絶対。」
「………」
 寄り添って、俺のことを嬉しそうに眺めるリュース。
 それに気付いて、照れ隠しに歩き出す俺。
 自動ドアが開いて、空港の中へ踏み出した俺達。
 もう、後は振り向かなかった。


               # # #


 青空を横切る飛行機雲を見上げ、空港の駐車場で元帥はタバコをふかした。
「行ったかぁ…」
「行きましたね。」
 横に立つセレブは、名残惜しそうにいつまでも青空を見つめていた。
「どうでもいいけど、セレブ?」
「はい、何でしょう?」
「なーして君はいっつも兄貴の車を借りて来るかな!?」
 元帥のワゴンRの後に、黒セダンが止まっている。
 先日の空港にもあったそれは、間違いなく兄貴の物だった。
「…借りてはいません。」
「んー?」
「無断で持ち出しているだけです。」
「…帰れっ」



                             第二十一話 END



次回予告・雨野&リュース
リュース「次回はとうとう最終回です。ご主人さま、短い間でしたけど、お世話に…」
雨野(スパコーン!)
リュース「あうっ!メガホンで殴るなんて酷いですぅ!」
雨野「確かに最終回だけど、別にお前と離れるわけじゃねぇだろ!」
リュース「え?そうなんですか!?」
雨野「ああ、そうだ…でも……」
リュース「?」
雨野「次回、メカ耳少女の居る風景・最終回『メカ耳少女の居ない風景』」
リュース「え…?ご主人さま、それって…」
雨野「………リュース………」

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